浄土真宗と曹洞宗の違いは?教え・葬儀・仏壇・焼香を比較

宗教の豆知識

「うちは仏教だけれど、宗派までは分からない」「浄土真宗と曹洞宗では、葬儀の何が違うのだろう」と迷っていませんか。

浄土真宗と曹洞宗は、どちらも日本で広く信仰されている仏教の宗派です。
ただし、よりどころとする教えや日々の実践、葬儀で使われる言葉、仏壇の整え方などには違いがあります。

ほかの宗派も含めて全体像を知りたい方は、先に日本の主要な仏教宗派の違いをご覧いただくと、自分の家の宗派を整理しやすくなります。
また、日常行事と宗教の関係については身近な宗教行事と日本の風習で解説しています。

私は愛知県の葬儀業界で約10年間、葬儀の施行や相談などに携わってきました。
また、私自身は真宗大谷派に属しています。
この記事では、宗派の公式情報と葬儀現場での経験を分けながら、浄土真宗と曹洞宗の違いを初めての方にも分かるように解説します。

先に結論をいうと、浄土真宗は阿弥陀如来の本願をよりどころとし、曹洞宗は坐禅の教えをよりどころとします。
ただし、「他力だから何もしない」「曹洞宗は自力だけで救われる」という単純な分け方では、それぞれの教えを正確に表せません。

この記事で分かること

  • 浄土真宗と曹洞宗の基本的な教え
  • 本尊、葬儀、戒名・法名、位牌などの違い
  • 焼香や読経について参列者が気をつけること
  • 自分の家の宗派を確認する方法

浄土真宗と曹洞宗の違いを一覧で比較

まずは、主な違いを一覧で確認しましょう。浄土真宗には複数の宗派があり、曹洞宗でも寺院や地域によって実際の作法が異なる場合があります。以下は基本的な違いを整理したものです。

比較項目浄土真宗曹洞宗
教えのよりどころ阿弥陀如来の本願坐禅の教え
宗祖・祖師宗祖は親鸞聖人道元禅師が伝え、瑩山禅師が広めた
本尊阿弥陀如来釈迦牟尼仏
代表的な実践念仏「南無阿弥陀仏」坐禅(只管打坐)
亡くなった方の名法名戒名
位牌原則として位牌を中心にせず、法名軸や過去帳を用いる。ただし家庭・寺院による一般に位牌を用いる
葬儀で見られる特徴帰敬式や法名、念仏など。引導とは呼ばない授戒や引導などを含む場合がある
主な本山本願寺派は本願寺(西本願寺)、大谷派は真宗本廟(東本願寺)など大本山永平寺・大本山總持寺

宗派・寺院・地域によって実際の作法には違いがあります。

浄土真宗とは

阿弥陀如来の本願をよりどころとする

浄土真宗は、親鸞聖人を宗祖とする浄土仏教の宗派です。阿弥陀如来の本願による救いをよりどころとし、「南無阿弥陀仏」と念仏を称えます。

ここで注意したいのが、「念仏を何回も唱えたから救われる」という説明ではないことです。浄土真宗では、念仏を自分の努力で救いを獲得するための修行としてではなく、阿弥陀如来のはたらきが自分に届いていることへの報恩感謝として受け止めます。

「他力本願」の他力も、「他人任せ」という日常語の意味ではありません。
阿弥陀如来の本願のはたらきを指す言葉です。

浄土真宗にも複数の宗派がある

一般に「浄土真宗」とまとめて呼ばれますが、浄土真宗本願寺派、真宗大谷派など複数の宗派があります。
本願寺派の本山は本願寺(西本願寺)、真宗大谷派の本山は真宗本廟(東本願寺)です。

同じ浄土真宗でも、焼香の回数、仏具の形や配置、勤行で読まれる内容などに違いがあります。
家の宗派が「浄土真宗」まで分かっている場合も、可能であれば本願寺派か大谷派かまで確認しましょう。

曹洞宗とは

坐禅の教えをよりどころとする

曹洞宗は、道元禅師が中国から日本へ伝えた仏法を、瑩山禅師が全国へ広め、その礎が築かれた禅宗の一つです。
福井県の大本山永平寺と、神奈川県の大本山總持寺を両大本山としています。

曹洞宗の教えで大切にされるのが、ただひたすら坐禅に取り組む「只管打坐(しかんたざ)」です。
ただし、修行は坐禅だけに限られません。
食事や掃除など、日常生活の一つひとつを丁寧に行うことも修行として捉えます。

曹洞宗を「自分の力だけで死後の世界へ行く宗派」と説明することがありますが、これは正確ではありません。
浄土真宗との違いを初心者向けに説明する場合も、「他力対自力」だけで分けず、それぞれが何をよりどころとしているかを見ることが大切です。

葬儀では何が違う?

浄土真宗と曹洞宗では、葬儀で使われる言葉や儀式の意味にも違いがあります。

浄土真宗では「法名」を用いる

浄土真宗では、一般に「戒名」ではなく「法名」と呼びます。浄土真宗の教えでは、故人を葬儀によって修行させたり、僧侶が引導を渡して成仏させたりする、という考え方をしません。そのため、葬儀でも「引導」という言葉は通常用いません。

葬儀は亡くなった方との別れの場であると同時に、参列者自身が仏法を聞き、自分のいのちを見つめるご縁として勤められます。

曹洞宗では授戒や引導を含むことがある

曹洞宗の葬儀では、故人が仏弟子となるための授戒や、仏道へ導く引導などが儀礼に含まれることがあります。
実際の式次第は寺院や地域によって異なりますが、浄土真宗と比べると、葬儀の中で行われる儀式や準備する法具が多く見える場合があります。

私が愛知県、特に名古屋市周辺で葬儀を担当していた当時、浄土真宗では僧侶が1~2名、曹洞宗では2~4名で勤める葬儀を経験しました。曹洞宗の葬儀では、式中の所作や準備するものを細かく確認する場面が比較的多かった、という印象があります。

ただし、これは私が担当した地域・時期・寺院での経験です。僧侶の人数や儀式の内容は、宗派だけでなく、寺院、地域、葬儀の規模、ご家族との関係によって変わります。「浄土真宗は簡単」「曹洞宗は厳しい」と全国共通の違いとして断定できるものではありません。

葬儀当日の一般的な進み方も確認したい方は、葬儀の実際の流れを現場経験から解説した記事も参考にしてください。

戒名と法名の違い

曹洞宗では一般に「戒名」、浄土真宗では「法名」という呼び方をします。どちらも単なる死後の名前ではありません。

  • 戒名:戒を受け、仏弟子となったことを表す名前
  • 法名:仏法に帰依し、仏弟子となったことを表す名前

浄土真宗でも、生前に帰敬式を受けて法名をいただくことができます。また、曹洞宗でも戒名の授与や表し方は寺院によって違う場合があります。費用だけで判断せず、菩提寺へ確認してください。

位牌・過去帳・仏壇の違い

浄土真宗では位牌を中心にしない

浄土真宗では、一般に位牌を礼拝の中心とはせず、法名軸や過去帳を用います。ただし、地域の習慣や他宗派からの改宗などにより、位牌が置かれている家庭もあります。
愛知県では形上、位牌を置いて葬儀式をしている傾向が多いです。

本尊は阿弥陀如来です。仏壇の形式や脇掛、仏具の配置は本願寺派と大谷派でも異なるため、購入や買い替えの際は、所属寺院や宗派に詳しい仏壇店へ確認すると安心です。

曹洞宗では一般に位牌を用いる

曹洞宗では、一般に仏壇へ位牌を安置します。本尊は釈迦牟尼仏です。両脇には道元禅師と瑩山禅師に関係する掛け軸などをお祀りすることがありますが、寺院や仏壇の大きさによって異なります。

焼香の回数やお経はどう違う?

焼香の回数や作法は、同じ仏教でも宗派によって異なります。特に浄土真宗は、本願寺派と真宗大谷派で回数に違いがあります。

一般的な作法は、次のとおりです。

  • 浄土真宗本願寺派(西本願寺):香を1回つまみ、額に押しいただかず、そのまま香炉へ入れます。
  • 真宗大谷派(東本願寺):香を2回つまみ、どちらも額に押しいただかず、香炉へ入れます。
  • 曹洞宗:一般的には2回です。1回目は香を額に押しいただいてから香炉へ入れ、2回目は押しいただかずに入れます。

ここでいう「押しいただく」とは、つまんだ香を額の近くまで持ち上げる所作のことです。

私が愛知県の葬儀現場で案内してきた際も、本願寺派は「押しいただかず1回」、真宗大谷派は「押しいただかず2回」、曹洞宗は「1回目だけ押しいただき、2回目はそのまま」という形が基本でした。

ただし、地域や寺院、葬儀の進行によって案内が異なる場合があります。焼香台に説明が置かれている場合や、僧侶・葬儀スタッフから案内があった場合は、そちらを優先してください。

参列者の宗派が、故人や遺族の宗派と異なることもあります。その場合、自分の宗派の作法で焼香することが、必ずしも失礼にあたるわけではありません。作法が分からないときは、前の人の動きを慌ててまねるよりも、焼香台の案内を確認するか、葬儀スタッフへ尋ねれば大丈夫です。

そして、焼香で最も大切なのは、回数や形だけではなく、故人を思い、静かに手を合わせる気持ちだと私は考えています。

葬儀の現場では、作法を間違えないことばかりに気を取られ、急いでさっと焼香を済ませる方も見受けられました。もちろん事情は人それぞれですが、形を整えることだけが目的になってしまう様子には、葬儀担当者として少し残念に感じることもありました。

回数を覚えることは大切です。しかし、一つひとつの所作を完璧に行うことよりも、故人との時間を思いながら、落ち着いて焼香することを大切にしていただければと思います。

参列準備を続けて確認する場合は、香典袋の表書き・名前・中袋の正しい書き方もあわせてご覧ください。

また、法要などで読まれるものにも違いがあります。

浄土真宗で親しまれている「正信偈」は、一般的な意味でのお経ではなく、親鸞聖人の著書『教行信証』に収められた偈文です。曹洞宗では『般若心経』や『修証義』などが読まれます。ただし、実際に読まれる内容は、葬儀・法要の種類や寺院によって異なります。

僧侶の人数やお布施は宗派で決まる?

僧侶の人数やお布施に、全国一律の決まりはありません。

現場では宗派によって金額に差があるように見える場合もありますが、実際には次の条件が影響します。

  • 僧侶の人数
  • 通夜・葬儀・初七日など、お願いする内容
  • 戒名または法名
  • 寺院と家との関係
  • 地域の慣習
  • 御車料や御膳料の有無

したがって、「曹洞宗だから高い」「浄土真宗だから安い」とは一律にいえません。
金額が分からないときは、「どのくらい納めさせていただけばよろしいですか」と菩提寺へ直接尋ねても失礼にはあたりません。
少し前までは「お気持ちで」など仰るご寺院様もいらっしゃいましたが、昨今は明確に教えてくださる方も多いのではないかという印象でした。

自分の家の宗派を確認する方法

宗派が分からない場合は、木魚を使うか、どのお経を読むかだけで判断しないでください。仏具や読経は手掛かりにはなりますが、それだけで確定できないことがあります。

  1. 菩提寺へ確認する
    寺院名が分かるなら、直接尋ねるのが最も確実です。
  2. 以前の葬儀や法要の資料を見る
    領収書、案内状、お布施を準備した際の記録などに寺院名が残っていることがあります。
  3. 仏壇の本尊や脇掛を確認する
    写真を撮り、寺院や仏壇店へ見てもらう方法もあります。
  4. 位牌・法名軸・過去帳を見る
    書かれている名前や形式が手掛かりになります。
  5. 墓地や親族へ確認する
    墓地を管理する寺院や、過去の葬儀を知る親族へ尋ねます。

菩提寺も決まった宗派もない場合は、葬儀社から地域の寺院を紹介してもらうこともできます。
ただし、葬儀の進行のしやすさだけで決めるのではなく、今後の法要や納骨、家族の考えまで含めて相談しましょう。

そもそも菩提寺とは何か、家とお寺の関係が分からない方は、菩提寺とは?家とお寺の関係や歴史も参考にしてください。

宗派が違う葬儀へ参列するときは?

参列先の宗派を完全に理解していなくても、必要以上に心配する必要はありません。葬儀で最も大切なのは、故人を悼み、ご遺族へ配慮して静かに参列することです。

  • 数珠は自分の宗派のものを使用して構いません
  • 焼香は会場の案内に従います
  • 分からなければ葬儀スタッフへ尋ねます
  • 他宗派の作法を批評したり、訂正したりしません

葬儀を執り行う側で宗派が分からない場合は、早い段階で親族、菩提寺、墓地、葬儀社へ確認することが重要です。

まだ葬儀を依頼する段階ではない場合も、事前相談で菩提寺・宗派・お墓について整理できます。
相談時の確認事項は葬儀の事前相談で確認したいことにまとめています。

まとめ

浄土真宗と曹洞宗の最も大きな違いは、教えのよりどころです。
浄土真宗は阿弥陀如来の本願、曹洞宗は坐禅の教えをよりどころとします。

その違いは、法名と戒名、位牌の扱い、葬儀の儀礼、仏壇の整え方などにも表れます。
しかし、実際の作法や葬儀の内容は、同じ宗派でも寺院や地域によって異なります。

インターネットの記事だけで判断せず、最終的には菩提寺や葬儀をお願いする寺院へ確認してください。
宗派が分からない場合も、古い葬儀資料、仏壇、墓地、親族などを順番に確認すれば手掛かりを見つけられます。

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