贈り物を注文するとき、「のしはどうしますか」「内のしと外のし、どちらにしますか」と聞かれて迷ったことはありませんか。
香典返しにも「のし」という言葉を使うため、お祝い用との違いが分かりにくいこともあります。
まずは「何のための贈り物か」を決め、その用途に合うかけ紙を選びましょう。
本来の「のし」は紙全体ではなく、右上の飾りを指します。
香典返しなどの弔事では、この飾りのないかけ紙を使います。
この記事では、葬儀業界で約10年働き、現在は贈答の仕事に携わるぐれてるが、のし・水引の違い、内のし・外のしの選び方、注文時の確認事項を整理します。
すべての作法を覚える必要はありません。用途を伝えて確認できれば大丈夫です。
のし・水引・かけ紙は、それぞれ何が違う?
「のし」は右上の飾り、「かけ紙」は品物にかける紙
熨斗(のし)は、贈り物の右上に添える飾りのことです。
もともとは、あわびを薄くのばして乾燥させた「のしあわび」に由来し、現在は紙に印刷されたものも広く使われています。
| 言葉 | 指しているもの |
|---|---|
| のし(熨斗) | 主にお祝いなどで使う、右上の飾り |
| 水引 | 包みを結ぶひも。紙に結び目を印刷したものもある |
| かけ紙 | 贈り物にかける紙の総称。のしのない弔事用も含む |
| のし紙 | 一般には、のしや水引が印刷されたかけ紙 |
お店や注文画面では、弔事用を含めて「のし」と呼ぶこともあります。「香典返しにのしを付ける」という言葉だけで、間違いだと考えなくても大丈夫です。大切なのは、実際に選ばれている紙が用途に合っているかです。
参考:三越伊勢丹「のしと水引」
紙を見るときは、飾り・水引・表書き・名前を確認
表書きとは、上段に書く「御祝」「志」など、贈る目的を表す言葉です。
下段には、原則として贈る側の名前を入れます。相手の名前を書く欄ではありません。
見本を確認するときは、右上ののしの有無、水引の色と結び方、上段の表書き、下段の名入れという順番で見ていくと、確認漏れを減らせます。
出産内祝いのように子どもの名前を入れる場合もあるため、名入れは用途ごとに確認しましょう。
水引は結び方と色を組み合わせて選ぶ
蝶結び・結び切り・あわじ結びの違い
水引は、色だけでなく結び方にも意味があります。同じ紅白でも、出産祝いと結婚祝いでは選ぶ形が異なります。
| 結び方 | 主な考え方・使われる場面 |
|---|---|
| 蝶結び(花結び) | ほどいて結び直せる形。出産祝い、入学祝い、季節のご挨拶など |
| 結び切り | 繰り返さないことを願う場面。婚礼、快気祝い、弔事など。用途に合わせて色を変える |
| あわじ結び(あわび結び) | ほどけにくい結び。婚礼だけでなく、色や地域の慣習に応じて弔事にも使う |
「あわじ結び=結婚祝い専用」ではありません。形だけで判断せず、色と用途も合わせて確認してください。お店では「結婚祝い用」「香典返し用」と目的から選ぶと分かりやすくなります。
黒白・黄白などの色は、地域や用途でも変わる
一般的なお祝いには紅白、弔事には黒白や黄白などが使われます。
ただし、「香典返しは黒白、法事は黄白」と全国共通で決まっているわけではありません。
関西地方などでは黄白を用いる場合がありますが、地域名だけで一律には判断できません。
家でこれまで使ってきたものが分かれば参考にし、不明な場合は用途と贈り先の地域を販売店へ伝えましょう。
水引の本数にも用途による違いがあります。婚礼では10本を使う例がありますが、迷ったときに自分で数だけを指定するより、用途別の見本を選ぶほうが確実です。
用途別の早見表|お祝い・香典返し・お供えを分けよう
次の表は代表的な例です。地域・宗教・家庭の慣習や販売店の取り扱いによって異なるため、注文時の確認用として使ってください。
| 贈る目的 | 表書きの例 | かけ紙の目安 |
|---|---|---|
| 結婚祝い | 寿・御結婚御祝 | のしあり/紅白などの結び切り・あわじ結び |
| 出産祝い・入学祝い | 御出産御祝・御入学御祝 | のしあり/紅白の蝶結び |
| お中元・お歳暮 | 御中元・御歳暮 | のしあり/紅白の蝶結び |
| 香典返し | 志・満中陰志など | のしなし/黒白・黄白など。宗教や地域を確認 |
| 法要へ持参するお供え | 御供 | のしなし/黒白・黄白など |
| 法要で参列者へ渡すお礼 | 志・粗供養など | のしなし/黒白・黄白など |
例えば、法要に持っていくお菓子と、法要を開いた側が参列者へ渡す品物では、贈る目的が違います。
どちらも「法事用」とだけ伝えると、表書きの判断に必要な情報が足りないことがあります。
「法要に参列するので、お供えとして持参します」「施主として、参列者にお礼を渡します」と、贈る側の立場も伝えましょう。
参考:シャディ「用途別のし・包装紙の選び方」、三越伊勢丹「お供え」
品物選びも確認したい方は、感謝を伝える贈り物の選び方(法要・お供え編)をご覧ください。
香典返しでは、のし飾りのないかけ紙を使う
「のしを付けない」は、何もかけないという意味ではない
香典返しで「のしを付けない」と説明する場合、主に右上の飾りを付けないという意味です。
品物を裸のまま渡す、紙を一切かけない、という意味ではありません。弔事に合う包装とかけ紙を選びます。
表書きは「志」などが使われます。「満中陰志」は仏式の忌明けに関わる表現であり、すべての宗教・場面にそのまま使える言葉ではありません。注文画面に複数の候補がある場合は、宗教と贈る時期を伝えて確認してください。
時期や予算から整理したい方は、香典返しの時期・金額・当日返しと品物の選び方もあわせてご覧ください。
品物のかけ紙と、現金を包む香典袋を混同しない
この記事で扱っているのは、主に品物にかける紙です。葬儀へ持参する現金の香典袋とは、贈る目的も書く内容も異なります。
香典袋の表書きや中袋を確認したい場合は、香典袋の正しい書き方をご覧ください。「香典を渡す側」と「香典返しを贈る側」を分けて考えると、必要な情報を探しやすくなります。
内のし・外のしは、包装紙との位置関係が違う
内のしは包装の内側、外のしは包装の外側
内のし・外のしという言葉は、のし紙やかけ紙を、包装紙の内側と外側のどちらに付けるかを表します。弔事用のかけ紙でも、お店の案内では同じ呼び方をすることがあります。
| 種類 | 重ねる順番・特徴 |
|---|---|
| 内のし | 箱 → かけ紙 → 包装紙。開封するまで表書きや名前が外から見えにくく、紙を保護しやすい |
| 外のし | 箱 → 包装紙 → かけ紙。贈る目的や名前を、包装を開けずに確認しやすい |
ここでいう「外側」は包装紙の外側です。配送用の段ボール箱の外にかけ紙を貼る、という意味ではありません。配送には、さらに輸送用の梱包が使われる場合があります。
配送か手渡しかに加え、名前を見せる必要があるかで考える
配送では紙を保護しやすい内のし、手渡しでは表書きが見える外のしが選ばれることがあります。ただし、「配送なら必ず内のし、手渡しなら必ず外のし」という決まりではありません。
例えば、お供えが集まる場面では、誰から届いたものか確認しやすいことも大切です。一方、お返しを控えめな体裁で届けたい場合は、内のしが候補になります。贈る目的と受け取り方を合わせて相談しましょう。
販売店によって標準の包装や対応範囲も異なります。高島屋オンラインストアは基本を内のしと案内し、外のしに対応できる商品や用途についても説明しています。注文画面で選べない場合は、購入前に確認してください。
参考:三越伊勢丹「のし紙とかけ紙の正しいマナー」、高島屋「ギフトサービスについて」
注文前に伝えておきたい5つのこと
呼び方に自信がなくても、次の内容が分かれば相談を進めやすくなります。
- 用途と立場:結婚祝いを贈る、香典返しを贈る、法要へお供えを持参する、など。
- 贈る時期・届け方:いつ必要か、配送か手渡しか。
- 地域や宗教:弔事の場合は、分かる範囲で伝える。
- 表書きと名入れ:希望する文字を、口頭だけでなく記録でも確認する。
- 数量と贈り先:品物が複数ある場合は、誰にどれを贈るか整理する。
相談するときは、例えば「四十九日後の香典返しを配送したいです。宗派と贈り先の地域は〇〇で、名入れは〇〇です。かけ紙と包装を確認してもらえますか」と伝えられます。分からない項目は、分からないまま相談してかまいません。
実務では、品物と名入れの組み合わせも確認する
贈答の仕事では、贈り先と品物の組み合わせを間違えないよう、何重にも確認しながら準備しています。実は、品物の種類が増えるほど確認する組み合わせも増えるので、準備する側はなかなか大変です。相手に合わせて選ばれた品物だからこそ、きちんと届けられるよう、リストと照らし合わせて一つずつ確認しています。
依頼する側でも、注文確認の画面や見本を見て、表書き、名前の漢字、品物、数量を確認しておきましょう。家族ごとに違う名前で贈る場合は、「すべて同じ名入れになっていないか」も確認すると安心です。
のし・かけ紙で迷いやすい質問
短冊のかけ紙では失礼になりますか?
短冊は、細長い形のかけ紙です。贈答品の包装に使われることもあり、小さいという理由だけで失礼になるわけではありません。
ただし、短冊にも慶事用・弔事用があります。用途に合うものを選ぶことが大切です。
表書きや名入れ、取り付け方は、用途や店舗によって異なります。注文するときは、仕上がり見本を確認すると安心です。

※仏事用の掛け紙、水引入り短冊、戒名入り短冊を付けた贈答品のイメージ
改まった贈り物で体裁が気になる場合は、注文前に仕上がりの見本を見せてもらうと判断しやすくなります。
参考:三越伊勢丹「短冊など、贈り物のQ&A」
名前には、贈り先の方の名前を書きますか?
基本は贈る側の名前です。ただし、出産内祝いでは子どもの名前、香典返しでは喪家の姓など、用途によって名入れの例が異なります。
「注文者の名前をそのまま印刷」でよいとは限りません。誰の名義で贈るものかを決め、販売店へ確認してください。
包装した後に、表書きの間違いに気づいたら?
発送前なら、まず注文先へ連絡し、正しい表書きと該当する注文を伝えましょう。内のしの場合は包装を開ける必要があるため、自分で直す前に交換・再包装ができるか相談すると安心です。
発送後は変更が難しいこともあるので、対応できる範囲を確認してください。
のしは言葉を覚えるより、贈る目的を伝えて選ぼう
のしは右上の飾り、水引は結び、かけ紙は品物にかける紙です。
まずこの違いを押さえれば、「弔事ではのしを付けない」という説明も理解しやすくなります。
選ぶときは、贈る目的、地域や宗教、渡し方の順に整理しましょう。迷う部分は、販売店に用途と立場を伝え、見本を確認すれば大丈夫です。形だけに気を取られすぎず、お祝い・感謝・お悔やみの気持ちが伝わる贈り方を大切にしてください。
まずは、次に贈る品物について「何のために、誰の名前で、いつ、どう届けるか」を書き出してみましょう。相談に必要な情報がそろい、注文時の迷いを減らせます。


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